『世界で一番、俺が〇〇』をぜひとも社会に悩む男性陣に読んで欲しい。自分が持つ闇を覗くきっかけになる
水城せとな著の男3人が主人公のファンタジーものだ。
水城せとなさんと言えば『失恋ショコラティエ』がぼくはすごく好きで、こっちは恋愛に対する男の闇というかキモさみたいなのが描かれていてすごくおもしろい。
今回の作品『世界で一番、俺が〇〇』は男の友情だったり、成功欲を描いている感じがする。
この記事を書いてる時点で5巻まで出ているが、最終的にどういう着地をするのかは見えてこない。
こちらの作品は恋愛よりも、男として必要だったり不必要だったりするプライドの闇が色濃くでている。
この記事では『世界で一番、俺が〇〇』を読んだことが無い人向けに、できるだけネタバレなしで最初のあらすじと魅力を紹介したい。
ぜひとも男の人に読んで欲しい漫画で、自分が持つ闇を覗くきっかけになる。
『世界で一番、俺が〇〇』の主人公は3人。
イケメンでそこそこ頭も回るし人付き合いもいいがニートのアッシュこと「山森啓太」。
外資系に働く高額所得エリートだが周りを信用しておらず敵だらけと思っているシュウゴこと「高瀬柊吾」。
アニメ制作会社で歩合制の低所得、労働時間も長くブラックな環境で働くたろこと「小山小太郎」。
3人は幼馴染で全員が28歳。
30歳を手前にすると男はいろんな悩みを持つ。
仕事のことだったり、結婚のことだったり、20代から30代っていうラインは将来に向けていろいろなことを考えるきっかけになる。
そんな中で登場したのが怪しい女性773号(通称ナナミ)が3人の運命を変える。
ナナミは「この中の3人のうち、300日後に最も不幸になった人の願い事をなんでも叶えるゲーム」を提案してくる。
3人は痛い女性がやってきたと最初思うんだけど、ナナミは「セカイ」という組織に所属する人で、願い事なら何でも叶えると明言する。
そして3人の目の前で時間を止めて見せて、3人を信用させる。
ちなみに不幸の定義はDQ値という絶望を表す数字で表示される。
ナナミが3人に手を当てるとDQ値が分かる仕組みになっていて、この数字が大きい人が勝者となって願い事を叶えてもらう権利が手に入る。
1巻ではナナミの登場から3人の普段の様子が描かれて、そこで終わりになる。
実は1巻だけ読んだときは、僕はそんなにおもしろみを感じなかった。
というのも「一番不幸になった人間が勝利」というゲーム。
それを友達同士ですることの展開が読めなかったからだ。
自分から不幸になってまで欲しい願いっていうのはあるのか。
友達同士なら普通に生活して、それで誰かが願い事を叶えてもらうようにすれば誰もしんどくないしある意味楽なゲームなんじゃないか。
1巻だけ読んだときの感想は「このあと面白い展開に持っていけるの?」だった。
だけど2巻の頭に登場した441号(通称ヨシヒト)という別のエージェントの存在がアッシュの心の闇をえぐってくる。
ヨシヒトはこの3人のゲームとは別のゲームを管理しているエージェント。
アイスクリームを食べるためにこの時代にやってきて、たまたまアッシュに見つかってしまった。
本来はエージェントが別ゲームに関与するのは駄目なことらしいんだけど、アッシュに対し「あんたは負け組で終わる」と言い放つ。
アッシュは他の2人を幸せにすることで他の人のDQ値を下げ、ラクして勝とうとしていた。
確かに友達同士でこのゲームをやるならその考えが思いつくのは分かる。
でもヨシヒトはこう言う。
「平凡な敗者思考しかしたことないやつがいきなりでっかい願いを叶えてもらえることになったって大した願い事は思いつかねーよ。
このまんまいってもしお前が勝てても、結局大したことない願いがかなって終わりだな。
もったいねー」
そしてアッシュが今の状況を壊したくない話をしたらヨシヒトはこう言った。
「ほんとに「今のまま」でいたらどんなものだって劣化していくよ。
古ぼけて慣れきって
飽きられて
忘れられる。
維持できねーんだ「現状」ってのは」
ヨシヒトの言葉に心揺さぶられるアッシュは、本格的にゲームに取り組むことになる。
このアッシュとヨシヒトのやりとりを読んで、僕の中の熱が一気に燃え上がる。
いま販売している5巻まで一気に読んでしまった。
この漫画に惹きこまれる理由は3人の悩みに共感してしまうところではないか。
アッシュはただ無職なんじゃなく、仕事をしているときに自分にもっと向いている仕事があるのではないかとか、この仕事を続けていてステップアップができるのかということを疑問に持った結果、仕事に集中できずにやめてしまっている。
頭が回るからこそ未来が見えてしまって、どの道を進めばいいのかわからなくなって足を止めてしまっている。
シュウゴは自分が出来すぎる人間だからこそ周りを敵視してしまっている。
些細なことでも足を引っぱられることを嫌がっていて、信頼できる人間が極端に少ない。
たろは優しすぎるがゆえに、自分が仕事を辞めたら他の人に迷惑がかかると思って辞められない。
でもそれ以上に、現状を変える勇気が無い。
だから好きな人ができても、その好きな気持ちが顔に出てしまっていても、好きという気持ちを相手に伝えることができない。
3人それぞれ悩みや想いがあり、読んでいていろんなところに共感をしてしまう。
そして彼らがナナミの持ち込んだゲームで自分の中の闇を展開していく。
3人の闇と、それに共感する読み手。
自分が持つ闇を覗くきっかけになる作品だ。
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